たぶんワタシ(このブログ)、いましばらくは、このBig waveに乗り続けるべきですよね。アクセス数的に。行政書士試験、受けてきたよネタ。…がしかし、今夜は毒親の話です。行政書士ネタは、あす夜、投稿予約してありま~す。
元TBSアナウンサー、今はタレント(本人自称)の小島慶子の「解縛」(げばく)を読みました。でもって、もう多分これが最初で最後だろうと思うぐらい、小島慶子についてまとめてみたので、引っ掛かる方は、ご覧あれ。
なんだかドッキリする表紙の本。
水着写真なんかも出している人とは知っていたけれど、ラ(裸)な感じの本人写真に、刺激色で「解縛」(げばく)の文字。親の呪縛から解き放たれる…っつう話なんだろうけど、なかなか緊張する表紙です。配色も、黒と黄色って、確か色彩心理的に警戒心を喚起する色ですよね。
が、しかし。
面白かった。
内容豊富。
文章まで書けるなんて…
そして最初に思ったのが、「女子アナ」ってこんな文章上手なんだ、ということ。この感想が既にバイアスに満ちた、どこから目線なんだっつう、色々失礼な感想だろうとは思うのだけど、ともかくそう思いました。他に(元)女子アナが書いた本というのが思い浮かんでこないし。語彙が豊富で表現がスムーズ。文章のリズムが良いのは、やっぱし音声言語で鍛えた人だからか。羨ましい。
内容は、
いわゆる駐妻…海外駐在員の妻の話や、子どものいじめの話、名門私立女子中・高の話、母や姉との軋轢、摂食障害の話、女子アナ論、女性のキャリアの話、等々、豊富な視線。
この人ってどういう人なんだろう。
なんで小島慶子本を読もうと思ったんだったっけ。テレビで時々見かけ、なんとなく好もしいようには思ってたけど、追っかけていたわけじゃなかったのでよくは知らない。。この本に書かれていたことをザックリ年表にしてみると、、、(本の表現では西暦と本人年齢と学年が混在していたので、多少ズレがあるかもしれません)
勝手に年表にしてみた
- 1972年(00歳) オーストラリア生まれ 父・母・9歳上の姉
- 1976年(04歳) 日本に帰国
- 1979年(07歳) シンガポール
- 1980年(08歳) 香港
- 1981年(09歳) 日本に帰国 地元の市立小学校
- 1985年(13歳) 学習院女子中等科入学
- 1987年(15歳) 摂食障害 姉が結婚
- 1988年(16歳) 学習院女子高等科入学
- 1991年(19歳) 学習院大学法学部入学
- 1995年(23歳) TBSにアナウンサー30期生として入社
- 2002年(30歳) 第一子出産
- 2003年(31歳) 第二子出産
- 2005年(33歳) パニック発作・不安障害 臨床心理士に相談
- 2010年(38歳) TBS退社
- 2013年(41歳) 「解縛」あとがき
(Wikipediaで多少情報を補っています)
何かのタイミングで、どうも毒親育ちらしいことを知ってから興味を持ったのだけど、それにしても、経歴見るだに重い。。重い人生やで。。。毒親論とはまったく別に、駐妻の世界もけっこうキツイらしい旨はどこかで読んだことがあります。そんな駐妻…の子どもライフからの、学習院、アナウンサー。純粋無垢なままでこの道を歩める人っているんだろうか。
TVでチラ見する限り、小島慶子って勝手にイイ人なんじゃないかと思ってた。
そりゃ、世の中的には毒舌キャラの位置付けなんでしょうが、マツコ・デラックス然り、デヴィ夫人然り(※個人の意見です)、西川先生然り(※個人の意見です)、その底にはニンゲンに対する愛情が流れていないと、視聴する方は不快で見続けてられないモンじゃないかと思っています。この本も、けっこうすごいエピソード(学友に濡れ衣とか)が随所に出てくるものの、読み味はそんなにくどくなく、モタレません。
実はそれほど「毒親本」ではない。―では何が内容かといえば、女性性・WLB・駐在妻・名門私立女子高・女子アナ論…
内容豊富すぎて紙面が足りなかったのか、やはり毒親論は書きにくいのか。
他人事ながら、存命の著名人が存命の親族についてどうやって書くのか、そのことがまず興味があったのです。私なら絶対書きにくい。そこに正義があっても、公益があっても、よう筆が進まんと思うのですよね。そしてそれが、毒親呪「縛」システムの優秀性。
母親のことは全編を通じて描かれているけれども、意見や批判めいたことではなく、彼女の目を通した事実関係や背景に終始している印象でした。彼女のそのときのリアクションも、そう生々しくない。…その辺りは、田房永子の母がしんどい 新人物往来社の方が、ほのぼの漫画の体裁なのに余程リアル。
それでも、
母は通り過ぎてから「あの子たちは今、ダヨ言葉で話していたでしょう。だから一緒に遊んじゃだめよ」と言いました。(解縛 P41)
と、ピンとくるエピソードがチラホラです。
摂食障害の吐き戻しで下水管の修理をしたくだりでも、いたわりや心配の言葉ではなく、「お金がかかった」「恥ずかしかった」等々…(P111)。しかも衝撃的なのは、この吐き戻しの繰り返しを知ってたふしがありながら、初めてかけた言葉がコレらしい、ということ。
基本的にね。
物体なんですよね。毒母親にとっての娘は。
私が以前、名前の付く心臓の発作を起こして通院していた時のことを思い出します。勝手にブログで知った母は「私も心臓の発作ぐらい起こしたことがある」「自分だけが可哀想みたいな雰囲気出して不快」の旨、電話で言ってのけてきて、久々にビックリしたことがあります。イチオウ場所が心臓なので、症状が重いとけっこう危ないこともあったわけなのですが、心配するどころか張りあってくるとは…。
本当は怖い駐妻ライフ
チュウサイ(駐妻)ネタのくだりは何気にボリュームが大きく、興味深く拝見しました。華麗なる家族に見えても、…イヤ、自分が仕事するわけじゃないのに見知らぬ外国で暮らすとかどう見ても無理ゲーなんですが、そんな駐在妻やその子どもがどんなふうに暮らすのか。
「一番上は外務省、大使の下が公使、次は興銀、東銀、都銀でその次が商社、三井物産、三菱商事、(略)一番下は航空会社、だって他のみんなは乗ってあげるお客さんだから」という企業ヒエラルキーを諳んじるようになりました。母がいつもそのように言うので、すっかり覚えてしまったのです。(解縛 P56)
コワイグロい(´;ω;`)
なんとなく、サトタ(里田まい)が、まーくんと共に渡米したときのワイドショーを連想します。メジャーリーガー奥もけっこう大変とか。
夫の社会的地位が高くても、回すお金の額が大きくても、学歴が凄くても、やってることは、皆同じ。ブラック企業一般職おツボネ様社会と変わらない、女同士の「マウンティング」。何とも悲しい話です。
お嬢様校の話も
小島慶子は学習院卒。当時のエピソードも面白かったです。
私にはちっとも縁のない世界ですが、それでも、聖心、フェリス、白百合…だったかな、OGを一人ずつぐらい知っていて。いずれも、とってもオモロイ、さわやかで清々しく、うち一人はリアルに「ごきげんよう」と発する、素敵な人たちです。なんつーかロマンがあるし、お育ちの良い人というのは、総じて善い人が多いなあと思います。
その他にも、アベノミクス下での女性の社会進出へのコメントなんかも出てきて、なかなか鋭い感じです。
毒親問題には構造要因があるように思っています。親世代(終戦10年後あたり生れ)の家族のカタチ…「妻を家庭に放り込んで夫は知らんぷり」…によって、煮詰められた女たちの怨嗟が子を縛るのです。
そういうわけで、毒親話にそう頁が割かれているわけでもなく、対決や決別のHow toが書かれているわけではないので、毒親に悩む人が、実用書的な読み方をしようと思うと、その目的には適わない本だと思います。
ですが、他の人の生き方をたどることで、救われる感じはします。自伝・伝記一般が有する効用というか。
小島慶子は、長く苦しんだ割に、蓋が開いてから数年の短期でこの内容の本を出版するあたり、人並み外れたタフさ(でもやっぱり大変だったりするんだろうけど)だと思います。その他にも彼女の、頭の良さとか、なんだかんだ言って笑い取るのが好きなんだろうという性格(やっぱりヒトが好いんじゃないかしら)を勝手に読み取ったりなんかして、読後感は爽やか…は言い過ぎかもしれないけど重苦しくは無い。
彼らもまた、受容のモデルを持たない人たちだったのです。「そこにいてくれてありがとう」と言われたことのない子どもだったのだと。(解縛 P171)
表紙の写真の小島慶子が、にっこりほほ笑んでいるように見えてからが本当の読了ですよ!!
たぶん。
小島 慶子
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ひとは何故毒親を語りはじめたのか。
なんとなく、2010年を真ん中にその±5年間で、毒親論が高まってきた感じがするのは、私の希望的観測でしょうか。
毒親には構造要因が寄与している気がしているので、時代というのも当然影響するだろうと読んでいます。ちょうど毒親の子ども世代の人が出産イベントを迎える時期だからではという計算です。
出産という、生物的・社会的ビックイベントに際して、親を捉えなおすという地獄の蓋が開く。
田房永子にしろ、小島慶子にしろ、出産で蓋が開いちゃったように観察しています。そして、並び立つ存在ではないけど、他ならぬ私自身も多分そう。
それでなくとも修羅場な初めての出産・育児という一大イベントに際して、干渉過剰を繰り出してくるのが毒親の生態。そこへ、社会人になって独立して以降、厳封していたつもりの脆弱な毒親の忌み子のメンタル。
一気に蓋が開いてトラブルになったり、Surviveできて表現力のある人が発信を始めたのが今なのかなあという気がしています。あるいは、まだ戦っている所で、自分自身が乗り越えていくために。
向き合って、表現して、同士を見つけていく過程で、乗り越え終わる人もいるかもしれない。
それが叶わなくても、被害者に、口にするのを憚らせるのが毒親システムの優秀性。そこをおして、発信するヒトが世の中にいることは、必ず今現在危機に(もしかして命さえ懸かった!!)瀕している人たちのキモチを軽くすることもあると思うのです。
それにしても、小島慶子さん、Surviveできて良かった。
自分を世界で最初に肯定してくれるはずの、親にさえ透明にされてしまった。彼女は摂食障害という形で、自分を傷つけ続けなければ保てなかった。
損ない続けなければ生きていられない。
それが毒親育ちの業だと思うのですよね。
読ませて頂いてありがたかったです。
…てな感じです。たぬ子でした~。
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